網膜剝離失明(17歳・黒猫)

 わが家の猫二匹を玄関前に出して、外の空気を吸わせた。黒猫♂カール(17歳)は網膜剝離のため先月から視界を失った。シルバー系♀キャンディー(18歳)は大丈夫だ。名前のカール、キャンディーは家人が近くにある大手菓子メーカー関東工場の医務室にいたことがあるので、そうつけられた。犬はクッキーとミルチ(ミルクチョコレート)だった。すでに死んだ。
 
 カールは失明して一カ月ほど経ったが、たいぶ適応能力が出てきた。ゆったりと前足と鼻を利かせて食事を食べ、定位置で休んでいる。失明は日常情報の多くを失うことでもある。運動量が大幅に少なくなって、体重が増えてきた。黒毛はツヤツヤしている。二匹の猫と自分自身がこの冬をともに乗り切ろうと準備している。すべてに温かさが必要だ。道具も心も。
 
 失明しても今の状況で生きていくカールに感心する。猫には過去・未来・夢はない。基本的には本能で生きるリアリストだ。見えなくなったことを泣かないで、その場その場を凌いでいく姿勢は、病状で心がグラつきがちな自分には崇高だ。