三が日

 元旦から始まった朝日新聞の連載小説は、吉田修一の「国宝(こくほう)」。きょう2回目を読み、映像的にイメージできた。長崎・丸山町の老舗料亭花丸で立花組新年会が始まる。紙吹雪のようなボタ雪が坂道に積もる。邪と清のクロス。
 
 大親分・立花源五郎がずらりとそろった客人を前に、「新しき年の初めの初春の今日降る雪のいや重(し)け吉事(よごと)」と挨拶して幕が開いていく。以前この作家が「悪人」を連載したときよりは、筆のすべりだしが軽くて重い、上手い。
 
 昨夜、わが家の新年会で3人の孫一人一人に短いメッセージを贈った。娘と息子から「長いよ」の警告。例により北海道魚介を好みで各自が海苔手巻きにして食べる。20年以上この形が続く。「アワビは不漁で高かった。来年は中止?」(女店主)。
 
 「昨春ステージⅢの下咽頭癌告知を受け、身辺整理。2ヵ月で33回の放射線照射、3回の投薬入院治療。夏の終りに『消えました』と申し渡され、声と味覚が戻った。『残り時間』にもう一度会いたい人が多い。会いましょう、あなたにですよ」
 
 これは今日届いたUさんの年賀状。我々の年代ではだれにでも一つ、二つは痛いや痒いがあるのが普通だ。それを口に出すか否かはその人次第だ。仲間や友人たちはそれぞれみんな戦っている。そんな「残り時間」になにをめざすか、だ!?