Tさんの東欧話

 「中世ヨーロッパの街並みを感じた」、チェコポーランドオーストリアなどを旅してきたTさんが切り出した。高くても四階だての建物で、造りの大きな様子が写真に写っている。Tさんは昔から写真を趣味にしてきたので、構図がシャープだ。
 
 都市ではプラハやウィーンが気に入ったようだが、訪ねた大学のホールや廊下の雰囲気は重厚だ。写真を見ていると、Tさんが「“第三の男”、映画観た?」と聞いた。「昔、観た。観終って気分が良くなかったのを憶えている」と答えた。
 
 「あの映画の音楽が高校時代のフォークダンスの曲でね、かわいい女の子たちを思い出したよ」。たしかにあの曲は心に残るものだった。第二次大戦後のウィーンを舞台にした映画だった。録画もしてあるが、いま観たいとは思わない。
 
 Tさんの話を聞いて、五木寛之が若い頃、それらの国を舞台に書いた小説が多かったのを思い出した。きょうは映画『沈黙』を観たかったが、上映時間が175分で諦めた。ふじみ野イオンシネマまで遠いし、体力的にもたない。いつか観る。