宗八カレイ

 電話の向こうから汐の匂いがする妹の声が告げた。「きょう宗八カレイを送るから。Tちゃんが漁師さんからもらってきたの」。積丹の浜の元気な声にこちらも返事に力が入った。Tはとしごの弟だ。寿都に通っていた仕事も終わったようだ。
 ああ、カレイの時期だったと思った。かつて今の時期、古平港岸壁はカレイ釣り場として知られ、竿が軒並み突き出した。子どもは仕掛けが簡単なので小さいのしか釣れなかった。俺はすぐ飽きたが、弟と従弟は何時間も粘って成果を上げてきた。
 宗八カレイの天日干しを焼いて食えば、カレイという魚の脂の甘みがよく分かる。カレイの刺し網で獲れた宗八をあさって受け取って食べる。カレイの身の上品さを楽しみながら。体調不備のなかで妹の元気な声と弟からの宗八は、元気にしてくれる。