佐藤愛子さんと「孤高の人」

 佐藤愛子さんが朝日新聞で「語る・人生の贈りもの」を連載しはじめた。この人は好きだ。詩人・吉田一穂(よしだ・いっすい)を高く評価しているから。父親は佐藤紅緑、異母兄がサトウハチロー。93歳の現在もベストセラーを出すなど元気だ。
 かなり昔、読売新聞に佐藤さんが書いた記事を読んだ。その中で吉田一穂が佐藤家をよく訪れ、自分(愛子)の頭を撫でてくれたとあった。そのとき子どもであった愛子さんは吉田一穂の本質を見事に捉えていた。「孤高の人」、そう書いている。
 吉田一穂はわたしの故郷・北海道古平(ふるびら)町で育ち、志をもって上京した。北の地の海と空と雪の結晶した独自の世界を表わした。東京・三鷹で貧乏暮らしをしたが、酒と煙草は高級品にこだわった。古平町に文学記念館がある。
 「半眼微笑 一穂」と書かれたコピーを関係者からもらった。吉田一穂の顔は半眼微笑ではない。北海道人特有のやや長め顔をした馬の風格すら漂う。この小父さんを愛子はほかの人と違うと見ていた。孤独ではない、孤高であると。