映画「あん」の暁光

 映画「あん」をBSプレミアムで観た。2月にも録画で観ている。そのブログを読んだら、考えさせられてる。いま観終ってやはり、大きく息を吸い込んでいた。良い映画は観るたびに、網膜に残る場面が変る。登場人物の人生はそれぞれに複雑。
 「人は誰にでも語りたくない過去があり、それは誰にも理解してもらえないものである」(江國香織「ちょうちんそで」)。多くの人はそう考えるし、自分自身もそう思っている。人生とは本来孤独なものであり、そこから小さな泡のように感情が生まれる。
 重い過去に細い針を刺すのが小説であり、映画だと思っている。「あん」はハンセン病をベースにした映画だが、静かにゆるやかに時間が経過していく。登場人物の苦しみは四季の移ろいとともに昇華され、新たな出発を用意する。温かな光だ。