妹の俳句

 妹からの冷凍便に手紙が入っていた。父の50回忌の模様を報告する内容。そして、彼女がいま高齢の俳句先生の施設でボランティアを行い、自分もときどき作っているという。俳句は初心者ばかりの会なので、恥ずかしがらずに書きとめているとあった。
 「父さんのこと、兄妹のことを思い出して」
         礼文島 海霧(じり)に包まれ 父眠る
    暗やみに 灯籠流れ 父偲ぶ 
    夕凪だ 兄妹皆んなで つぶ拾い
 哀愁というか、妹の心象風景の一端がうかがえる。オレが4年生のとき、父が添削してくれた句が賞に選ばれた。「初暦 めくる妹 背伸びして」。この句のモデルは妹だ。60年前の記憶がよみがえる。妹はそのとき赤いスカートをはいていた。