真鯛のアラ汁

 「真鯛のアラ汁」。冷気が街を覆っている夜は、鍋料理に限る。そう告げて出かけた。突然の要望に月1、2回、この鯛アラ汁がつくられる。昨夜も新鮮な鯛の頭とヒレ横ハラスの切り落としにしゃぶりついた。鶏団子、野菜種々も入っている。
 アラはスーパーの刺身になった残りをパックしたもの。頭の縦ブツ切り、身のついた骨、尾。この鍋は鯛の上品な出汁の旨み、魚類コラーゲンの甘さが良い。少し入っている鶏団子の旨みが、コクを加える。目玉周りのゲルがサイコーだ。
 深めの皿に取り味ポンを加えて、一挙に食べ始める。「孤独のグルメ」の五郎さんみたいに、のめり込んで味わう。顔が上気してくる。会話なし。鍋には食べどき、タイミングがある。わが家の鍋物御三家はゴッコ汁、カジカ汁、真鯛アラ汁。
 これらの鍋も子どもの成長とともに量が変ってきた。こぼしながら食べた幼年期から家族の成長とともに大きな鍋になった。いまは二人分で満杯になる。大晦日に娘家族が来て、全員で年越しをする。それぞれ用事で新年三ヶ日は無理なのだ。
 子どもたちはそれぞれ来客や実家への年始挨拶など予定が詰っている。故郷では大晦日おせち料理などご馳走を食べる。古平を出て半世紀、埼玉・坂戸で大晦日の宴が回ってきた。年一回の豪華魚介はもちろん積丹半島産が中心。