寒ブリのしゃぶしゃぶ

 「夜はなにか暖かいものー」、底冷えの日々にそう伝えた。帰宅したら、「ブリのしゃぶしゃぶ」、「いいねぇ!!」。新しいカセットコンロの脇に、ブリの柵切りが皿の上に整然としていた。大根、白菜などの野菜を鍋に入れてから、身をしゃぶしゃぶした。
 味ポンで調えた皿に取り出し、千切りの生姜と大根の鬼下しと一緒に口に入れた。新鮮な成魚の舌触りは絶妙で、次から次に手が出た。二人で食べるには多いと思っていたが、なんと完食。残りの汁にご飯を少し入れ、卵を落として〆にした。
 積丹半島沖で上がった寒ブリは妹夫婦が送ってくれた。捌いて棹に分けてくれる。これを家人が時によって刺身、たたき、煮物に仕上げる。獲れたて冷凍のまま届き、わが家の冷凍庫に保蔵される。その有難味を心に刻んで味わった。
 ブリは出世魚で、成長につれて呼び名が変る。祝い魚だ。かつて山口・長門市の大養殖場で「全国的に需要が多い」と聞いた。昨日のブリは日本海積丹産。故郷を出て半世紀、出世はしなかったが、年齢なりの味わい方が分かってきた。