「藤沢周平」

 きょう新聞の訃報に「小菅和子(こすげかずこ=故藤沢周平さんの妻)昨年12月29日死去、86歳」とあった。作家・藤沢周平を大成させた人物だと思う。この結婚は、彼の筆の流れを変え、やがて性格まで変えることになった。そう思っている。
 
 藤沢は「私自身当時の小説を読み返すと、少少苦痛を感じるほどに暗い仕上がりのものが多い」とエッセイに記している。それまでの人生がその言葉に重ねられている。結核、最初の妻が若くして死去などもある。心の深い皺は彼一人が知る。
 
 ラテ面に“藤沢周平と娘”(NHKBSプレミアム)。11時からですでに10分過ぎていた。以前観た再放送だ。妻を失った父の姿を娘が追想している。彼の作品が生まれる現場を一部ドラマ化。彼の時代小説は昭和の作家の産物だと思う。
 
 野坂昭如の帽子、池波正太郎のマフラーという粋さに密かな憧れもあったようだが、自ら白旗を上げている。そういう文章があった。庄内地方への郷愁、変りゆく故郷への喪失感は心を打つ。BSフジで「残日録」が明日放映される。