“女人禁制”

 大相撲巡業での“女人禁制”アナウンスが騒動になっている。一連の報道を見て、郷里・神威岬伝説を思いだした。積丹半島先端は外海に突き出し、強風で海が荒れる。海難防止とアイヌ伝説が相まって、神威岬は昔“女人禁制”となっていた。
 
 義経伝説。アイヌ首長の娘が、北海道日本海沿岸を北上途中の源義経に惚れた。義経を追ってこの岬まで来たが、義経は出発した後だった。娘は「命を懸けて女を岬越えさせない」と断崖から身を投げた。化身が眼下の神威岩になった。
 
 重なる海難事故を恐れる船乗り人に語り継がれた。義経伝説が絡むことでその波及は広がった。かつて地域の老人たちはその悲恋物語を子どもたちの耳に吹き込んだ。その後、半島を回る陸路が開通したことで、この伝説は消えていった。
 
 “女人禁制”は日本でいくつか見られる。今回、「命か、伝統か」の点から議論されているのは残念。ジェンダー論から「大相撲は“女人禁制”を変えるべき」との意見もあるが慎重に検討すべきだ。伝統にはなにかの意味があるからだ。