夢の続き

 9月17日。50年前に利尻沖で事故死した父の命日。半世紀を経てようやくこの事実に向かい合うことができるようになってきた。20歳の自分の人生の最大局面の詳細はほぼ覚えていない。人はきびしい悲しみを記憶が拒否することもある。
 
 今年、吉永小百合さんの映画や出川の「充電させて」で慄然と存在する利尻富士を目を凝らして見た。父は魚の漁のたびこの〝寂峰〟のふもとの漁港に寄った。そしてその山が見えるだろう武蔵堆で亡くなった。その瞬間のわが心は不明だ。
 
 一つだけ言えることがある。複雑な家庭に生まれた父は普通の家庭を夢見ていた。古平町で母と結婚して家族を愛した。大きな声で休みなく働いた52歳の人生だった。最近その父の望みをできるだけ続けようと思う。生きがいであり使命かも。