「あゝ麗はしい距離(ディスタンス)」

 「一穂は、算数にはお手上げだが、高等数学、幾何学を心得ていた」。高橋秀明(詩人、小樽市在住)の比喩に驚いた。孤高の詩人・吉田一穂の詩論(本人は試論といった)について綴っている。一穂の詩の難解さを見事に表現する。
 
 「極の誘ひ 吉田一穂展―あゝ麗はしい距離(ディスタンス)」。9月22日―11月18日、北海道立文学館特別展示室。札幌の妹が知らせ、実際に会場に足を運んでくれた。9月末に資料一式を受け取った。じっくりと何度も読み込んだ。
 
 展示会場で入手した冊子は良く編集されていてガイドブックとして秀逸。寄稿者の一人・水見隆夫さんが今年6月に急逝されたと記載あり。かつて隆夫さんはじめ水見兄弟から「一穂先生」の話を聞き、書のコピーももらった。残念だ。
 
 若いころ三鷹市に取材で行き、「この地に住んでいた詩人・吉田一穂に興味をもっている」と述べたら、同行のベテランカメラマンが答えた。「君は金持ちにはなれないな」。彼は一穂を知っていたかは不明だが、その発言は当たっていた。