「積丹ジャガ」

 
 子どものころわが家の畑は小山の中腹にあった。横の大きな畑は母の実家・隣の家のものだった。畑は女衆の仕事で、母はいつも祖母(母の母親)、叔母とジャガイモ、カボチャ、大根などを作っていた。食べる分の種まきの春、収穫の秋。
 
 そのときは子どもたちも動員された。オレと弟は小さなショイコにジャガイモ袋や大根を背負って坂道を下り、道路わきの一時置き場まで往復した。叔母が「だいぶ運べるようになったね」と褒めてくれるのが嬉しくって、兄弟で競って運んだ。
 
 仕事の合間の楽しみは山ブドウ採り。叔母は秘密の場所を知っていて三人で摘んだ。酸っぱいけど少し甘い山ブドウをたっぷり収穫した。三人で目を合わせた。午後叔母は玄関前で一升瓶に山ブドウを詰め、棒で潰した。ブドウ酒づくり。
 
 玄関タタキに「積丹ジャガ」、「積丹カボチャ」のダンボールが置いてある。積丹町の妹が送ってくれた。家人が知り合いに「このキタアカリは煮すぎるととけてしまう」とおすそ分けしていた。肉じゃがで、懐かしく故郷を思い出した。