詩人 エミリー・ディキンスン

 けさの朝日「折々のことば」は16世紀の米国詩人・エミリー・デッキンスン。「夏の日をくり返すことができる者は、夏よりも偉大だ」。鷲田清一は「老いて人はその盛りを懐かしむだけでなく、その蜜汁をより濃く、より深く味わいなおす」と述べる。
 
 この女流詩人に50年近くかかわってきた。片指で打ったタイプライターの音、一行おき9枚で仕上げた卒業論文。「前例のない短さ」(A先生)。それでも通してくれた。今では恥ずかしくて自分自身を破り捨てたい。A先生のゼミで彼女を知った。
 
 昭和45年4月29日に初めて「エミリ・ディキンソン」(新倉俊一著、篠崎書林)を購入。以後、目についた本は買い求めた。ことばの逆説と二重性にあふれた“形而上詩”で、読んでいると螺旋水流にますます溺れていった。今もつづく。
 
 「陽気さは苦悩のよろい なかでは警備を怠らない だれかがその血を見付けて “傷ついている”と大声を出さないように」
 
 「百年の後には 誰もこの場所を知らない そこで繰り広げられた苦悩も 平和のように静かだ」