「亡きあとの世界にプレゼント」

 「佐治恵子さんは1946年に生まれた団塊の世代だ」、けさの朝日12面「ザ・コラム」(秋山訓子・編集委員)の書き出し。佐治さんは夫を亡くした2008年ごろからNPOに寄付を始めた。「次世代になにか残せないかなと思って」(佐治さん)。
 
 佐治さんは新入社した会社の社長秘書として活躍していた。自立をめざす女性の先陣として眩しく見えた。以前も書いたが、そんな女性が競っていた会社であった。大手広告会社で活躍していた佐治さんのご主人も以前はこの会社にいた。
 
 その後ご主人が亡くなり、子どもはつくらなかったので、遺書に自分の残すお金の寄付先を指定した。そのことが「亡きあとの世界に 未来をつくるプレゼント」の見出しになっている、記事を読み終えて、いかにも佐治さんらしいと思った。
 
 高齢者から若者への社会保障費のシフトが課題になっている。そんな時代背景の中で今回のエピソードが取り上げられた。高齢者の志、とくに団塊の世代の考え方が問われてくる。語るが実行する人は自分も含めてまだまだ少ない。
 
佐治さんには5年前のN社長の葬儀に参列してお会いした。ご主人にもお世話になった。自分が30代のときから仕事のやり方を教えてもらった。自分で会社を興してからは多くの仕事を与えてくれた。声がかかるとすっ飛んでいった。
 
会社創成期にありがたかった。次世代のPRマンとして丁寧に指導してもらったご恩は忘れない。佐治さんご主人の手書き年賀状が途絶えてすでに長い。明るく真摯に、そんな姿勢を少しは引継ぎできたのだろうか。