ニシン、春を告げる

 「ニシンの大きな群来(くき)を確認 小樽の沿岸」、北海道新聞電子版がそう伝えている。20日早朝に見つかり、余市水産試験場が確認したという。かつてニシンは北海道を代表する水産資源だった。自分が生まれた頃からニシンは姿を消した。
 
積丹半島古平町と美国町の途中に群来村という部落があった。春先にはニシンの大群が産卵のために打ち寄せ、海一帯が乳白色になった。叔父は子どものころ高台から海が白く変わるのをながめていた、という。それは春の兆しでもあった。
 
 「近々ニシンも送ります」。さっき積丹町の妹からメールあり。頼んでおいた「ごっこ(ほてい魚)」が昨夕届いて、電話でお礼を述べたばかりだ。今年は海が時化(しけ)つづきで手に入らなかったが、偶然に余市町の魚屋さんでゲットできたという。
 
 朝、家人が「今晩はごっこ鍋にするから」と言って出かけた。ゴッコは厳寒の中で産卵し、ニシンも春告魚として沿岸に寄せる。親魚たちは凍りつくような海水に産卵して命を終える。卵が孵化するころ日本海に春の光が差し始めることを信じて。