岡田准一、「土方歳三」役に

岡田准一なりの外科医・財前五郎役だった。野望を成し遂げるために猛進する。かつての田宮二郎が演じた冷徹な財前五郎役に比べれば、だいぶ動的な演技だった。劇画的な、というか背伸びさせた演出を感じた。今風の財前像なのだろう。
 
テレビ朝日5夜連続ドラマ「白い巨塔」は山崎豊子原作で、安心して観られた。医療現場での手術事故や大学病院の閉鎖性を問う社会小説として話題を呼んだ。現在も同じような問題が起こっている。骨太の構成は時代を貫く。
 
主人公を演じた岡田准一、次は映画「燃えよ剣」の土方歳三役だという。司馬遼太郎原作のこの作品も幾度か映画、ドラマ化されてきた。知れば知るほど愛さずにはいられない土方歳三だけに、来年の公開が待ち遠しい。
 
波乱にみちた土方の生き方は敗者の美学だ。男前で剣に強くリーダーの冷徹さをもち、負けと知っていても己の道を進みゆく。司馬作品が書き求めた日本人の心を辿って行く小説だった。かの風景はデジタル化されてしまったのか。