エープリルフール・失敗

朝日新聞が公募した「天声新語」に当選した――と、エープリルフールで友人たちに連絡しようとした。だが、淋しくなって!思いとどまった。言うまでもなく、落選。先月半ばに入選作が発表され、紙面に掲載された。小生のものは欠片もなかった。今回の公募タイトルは「挑戦」で、以下のように書いて1月中旬に投稿した。昨日の朝日be版の「サザエさんをさがして」では、「うそが許されるのは午前中だけだ」とある。いずれにしても、今朝早くから出かけ、さきほど戻ったので間に合わなかったのだ。
 
今年七月末に六十五歳になる。病気治療も七年目に入った。この病気の存命率は統計的にこの辺から厳しさを増す。また、今年の一月十四日で心臓の大手術から二年経った。次第に体力も戻ってきた。長年酸素ボンベを引いて歩いて曲がった背骨もようやく直ってきた昨年八月、初めての「句集」を八十部つくり、〝快気祝い″代わりに友人・知人に配った。十年前に俳句作りを始めた頃の三十句と、手術成功後の三十句を収めた。数人から思わず泣いてしまいそうな暖かい手紙をもらった吉田一穂(いっすい)という詩人がいる。大正・昭和期に三木露風北原白秋などに師事し、金子光晴らと競い合った。わが故郷・北海道古平町で育ち、その地を「白鳥古丹(カムイコタン)」と呼んで愛した。「海の聖母」などの詩は難解で〝孤高の詩人ともいわれる。評価の輪は大きく広がらなかった二十代から四十代までこの詩人の作品を読んできた。碩学と凛とした姿に憧れた。いつか自分で一穂を書いてみたいと考えてきた。この正月に「体調からみて挑戦は今しかない」と確信した。今年中に書き上げ、小冊子にすると決意した北の地は今冬かつてない厳寒に襲われている。弟妹たちが猛吹雪と荒れる日本海に向き合って日々暮らしている。「ふるさとは 吹雪の中に 寝つかれず」。自分の句集に入れた一句である初めの「ふるさとは 吹雪の中に」は、冬の古平を思う一穂の言葉である。無断借用はこれ限りにする。