鯖街道

北海道新聞「卓上四季」から―。
 
若狭は、古くは「御食国(みけつくに)」として朝廷に塩や海産物を納めた。平安中期10世紀の編集とされる「延喜式」にも書かれている▼時を経ながら、京に暮らす庶民の台所とのつながりも深まっていく。担いで運ぶ荷の中でも魚介類では鯖(さば)の量が多く、いつのころからか若狭街道は「鯖街道」と呼ばれた。現在の福井県小浜市京都市出町柳を結ぶ道だ▼小浜の港でひと塩し、夜も歩き通しで京まで運ぶとちょうど良い味になったという。「京は遠ても十八里」とうたわれたそうだから70キロ余りの道のりか。急速に鮮度が落ち「鯖の生き腐れ」とさえ言われる魚が無事に届き、大勢の胃袋に収まった。若狭の海と京都はそれほどに近い▼現代の若狭湾は、「原発銀座」の異名を持つ。送り出すのは鯖ならぬ電力だ・・・安全性や電力需給の見通しに、「鯖読み」などあってはならない。
 
 鯖も美味しい魚である。焼き魚、鯖味噌煮、鯖寿司、シメ鯖などほぼ全国で食べられている。缶詰や「鯖節」(さばぶし)にされたりもする。九州地方などでは鮮度が良い場合、刺身や胡麻鯖など生食で供されるという。いまや『ブランド合戦』の様相が色濃くなっている。
 
 子どもの頃、鯖の味噌煮がおかずに出れば嬉しかった。見ただけで食欲が湧いたからだ。鯖の旨味が味噌によって一段と凝縮され、口一杯に広がった。すかさず、ご飯を多めに頬張ったものだ。母親が料理する新鮮な鯖の目はまん丸で真っ直ぐ上を向いていた。ただ、刺身では食べたことはなかった。そんなことを思い出した。秋刀魚、鯵と並ぶ日本の食文化の代表格だ。夕方、魚屋さんに行って、新鮮な魚を見てこようかな!
 
追記/昨日午後NHKBSプレミアムで「太陽がいっぱい」を放映していた。気がついてTVをつけたら、船上で友人の死体をくるんでいる場面。その後、刑事がホテルに踏み込んでくるところで、外出しなければならなかった。アラン・ドロンのあの怪しい眼つきがやはり心を動かす。何回、何十回も見ているが細かい部分はほとんど忘れているものだ。少しでも、見ることができて良かったー。