綿矢りさ

隣町に作家の友人・F氏がいる。彼のブログ「行逢坂」はほぼ毎日フォーローしている。417日の最後に、次のような書き込みがあった。
 
《私はたくさんの情報が身体を流れていく感覚が好きだ。それらは私に何の影響も与えずに透過していくけれど、確実に私をよごしてくれる。毎日のニュースは、その日浴びなければいけない外での喧噪に耐えるための、免疫をつけてくれる。》
 これは綿矢りさ「ひらいて」(『新潮』5月号)の一節。高校3年生の主人公の独白として置かれている。ことばも感覚も、なるほど若い力を秘めている。240枚の小説、まだ読み終えてはいないが、侮りがたい活力と言うべきか。
 
F氏は少しだけ年下であるが、文学的な切り込みは相当に鋭いものを持っている。小生は綿矢りさの小説を読んだことはないが、彼のこの一文をみてから、ずっとどこか気になっていた。
 
今朝の読売「文芸月評」が綿矢作品「ひらいて」を大きく取り上げている。最後に「この作品は、一個の人格が他者との出会いを通して、成長してゆくことを描いている。デビュー10年。人間を観察する作家の目は太ってきた」と高く評価している。
 
女性作家の小説はおそらく10年位読んでいない。瀬戸内寂聴「いよよ華やぐ」を除いては―。F氏のお墨付きなので、綿矢作品を少し読んでみるかな!!