伊勢正三「22才の別れ」

 朝日のbe版「うたの旅人」に、伊勢正三「22才の別れ」が取り上げられている。この歌のタイトルを聞くと必ずC氏(Cちゃんと呼ぶ)が反射的に浮かぶ。体育会系でありながら、落語を愛し、ジャズに入れ込み、蕎麦に凝り、カラオケでは必ず「22才の別れ」を歌う奴だ。いま札幌でタクシーの運転手をしている。
 
 彼とは30代半ばに知り合い、15年間ほどよく飲み歩いた愛すべき仲間である。向田邦子因みの赤坂「ままや」で定例飲み会を始め、月一の「ままや会」を続けた。現在も、別の幹事役が年一回だが、その名称の会を続けてくれている。
 
 腹からの仲間に理屈はいらない。ただ、お互いに酔いで混濁した頭で思いつきの意見を言い合い、「そうだ!」といっては飲み、「違う?」といってはまた飲んだ。飽きてくると、Cちゃんは憎めない笑顔をさらに大きく崩して、「もう一軒行く?」と言うのが常だった。それで店を替えた。
 
 彼は「22才の別れ」をきわめて情感的に、しかし、リアルに歌った。伊勢正三作詞・作曲のこの曲は元々甘ったるい流れが底辺にある曲だが、Cちゃんは真面目に自分の初恋と重ね合わせるように語り歌った。「・・・17本目からは一緒に 火をつけたのが きのうのことのように 今はただ 5年の月日が永すぎた春といえるだけです・・・」YouTube 22才の別れ)。
 
 彼が札幌に帰ってしばらくしてから、高校の同級生のK君から連絡があった。「お前の友だちが運転手さんのタクシーに乗ったよ―」と。深夜帰宅するときに、乗ったタクシーの運転手がCちゃんで、Cちゃんから古平町出身の小生の話が出て、共通の友人だと分かり、「さんざん悪口を言い合った」そうである。そんな偶然もあるんだね。Cちゃん、今年も行くから、絶対会おうね!!