化石政治家たちへ

毎日新聞「余録」から。
 
「口に雷を宿している」は古代ギリシャの政治家ペリクレスへの評だ。「われらの政体は少数者の独占を排し、多数者の公平を守ることを旨として民主政治という」。こう訴えた演説はアテナイ民主政の美点を格調高く示して今日も人の胸を打つ▲「われらは富を行動の礎とするが、いたずらに富を誇らない。貧しさを恥とはしないが、貧困を克服する努力を怠るのを深く恥じる。また己の家計同様に国の計にもよく心を用い、己の生業の熟達に励むかたわら国政の進むべき道に十分な判断をもつように心得る」▲しかし歴史は皮肉で、アテナイ民主政はペリクレスの後には扇動政治家が暗躍する衆愚政治に傾く。この古代民主政の光と影を知るはずのギリシャ国民だが、今その民主主義の袋小路が欧州、いや世界中を揺るがしている―
 
 まったく、わが国においても同様の傾向は明らかだ。「衆愚政治」とは嫌な言葉だ。あるときは「国民は賢く、バランスが取れている」と言われ、あるときは「国民は強いリーダーに憧れ、盲目的になる」と言われる。こうした発言は政界のみならず、マスコミ報道でも頻繁に聞かれる。いい加減にしてほしい。
 
言っておくが、ギリシャの昔から今日まで、政治家が真に国民の幸せのためにその身をささげたことはない。ましてや彼らが国民のためになる良い社会をつくったことなど、一度もないのだ。そう思っている。こうした政治に対する絶望感がむしろ国民をしたたかにさせて、より良い社会につながる確率のほうがずっと高いのだ。そのようにして、我々の先輩たちは生きてきたのだ。化石政治家たちよ、去れ!!