野田首相vs大越キャスター

  昨日のNHK「ニュースウォッチ9」に野田首相が出演して、大越健介キャスターのインタビューに答えた。問答は延々と続き、同番組は7分間延長されたが、両者のやり取りで大部分を使った。これを受けて、今朝の各紙は「大飯原発再稼動の判断時期はそろそろ近い」、「消費税で小沢氏との会談に意欲」などと取り上げている。
 
 同番組を観ていた方も多かったと思うが、小生は広報専門家の立場から若干の感想を述べてみる。まず、野田首相の説明が長すぎて、主張したいポイントがよく国民に伝わらなかったのではないか。最近、話す時に首相は手振りを使うが、これはまだほとんど効果を上げていない。「以前この番組に出演したときと発言内容が変わっていない」と、大越キャスターが何回か指摘して更に踏み込んだ判断を求めたが、切れ味が鈍い回答との一言に尽きた。
 
 そもそも首相が国民に向かって真摯に、熱意をもって持論を述べ、理解を求めるとの姿勢がほとんど見られなかった。大越氏の突っ込みに対して、冷静に受け止め、冷静に反論するという基本は守り通したものの、それが長時間インタビューでは裏目に出て、締りのない印象を国民に与えていた。具体例もなんだかピンボケ気味で、首相が大事な時間を使ってこんなこまごまとしたことを説明するのかという疑問すら抱かせた。
 
 NHKの当番組にこれだけ時間をとるならば、当然、政府広報番組として批判される可能性は常にある。それを避けようと、大越氏は必死に食らいついていたが、最後までピンが合わず鮮やかな映像には結びつかなかった。震災復興についても復興庁の不手際が浮き彫りになっただけで、首相の強いリーダーシップはついぞ聞かれなかったのは残念だった。
 
 「命を懸けて取り組む」と断言している消費増税問題についても、その命を懸けた取り組み工程が明確に示されなかった。国民はこの長いインタビューをどのように観ていたのか、いずれ近いうちに何らかの反応(支持率などで)が出てくるだろう。「また、同じようなことを繰り返している―」とのイメージをさらに強めていく、迫力のない野田首相の「説明会」に終わったように感じてしまった。
 
 決定的に欠けていたのが、総理大臣としての国民に対する明確なメッセージの強い発信だった。