「電力利益」「二つのタワー」「気温15度」

朝日は一面トップで「電力利益、家庭から7割」と題し、「経済産業省の調査によれば、全国10電力会社の電力販売による収益は、家庭向け電力が販売量の約4割しかないのに、利益の7割を占めていることがわかった」とある。「企業向けに比べ、家庭向けが割高になっているからだ」と指摘している。
 
一方、読売も2面で大きく「東電利益9割、家庭から」と取り上げ、「東京電力経産省に提示した料金の収益構造の概要が分かった。電力量で4割弱を販売している家庭向けから9割の利益を稼ぎ出している構図だ」と報じている。朝日、読売両紙ともに家庭向け料金の算定方法の内訳に踏み込んでいる。いずれも情報は経産省発であり、算定方法見直し論が強まることが推測される。
 
読売社会面に「時代映す二つのタワー」と題して、コラムニストの泉麻人氏が次のように述べている――東京タワーができた昭和30年代の映画「下町の太陽」(山田洋次監督、倍賞千恵子主演)の舞台が、スカイツリーからほど近い曳船あたりだ。高度成長時代を支えた町工場の風景、ブルーカラーとホワイトカラーの若者の対比が描かれていた。しかし、都心に超高層ビルが次々と建設され、タワーは徐々に埋もれていく。そういう風景の変遷と経済状況が下り坂になっていく時代とが、ぼんやり重なり合う。スカイツリーは落ち着いたカラーリングやLED照明による節電など、震災後の空気に合っているように思う――泉氏の「とうきょう観察」の技はこれまでもマニアックでありながら、それゆえに鋭かったので、興味深かった。
 
朝日社会面(37面)に天皇陛下の心臓手術執刀医の天野篤順天堂大教授が同紙の取材に応じ、両陛下が帰国した政府専用機のタラップから下りたときに「やった。手術は成功した。完全勝利だと思った」と語っている。天野教授が両陛下に「一日の気温が15度を超えたらお元気になれます」と伝えていたそうである。この「15度を超えたら」との言葉に経験上、共感した。先日(5/14)のNHK「プロフェッショナル」の天野氏も良かった。