「高峰秀子の言葉」

今朝の日経「春秋」に「空のお祭り3部作」完結編として「トキの巣立ち」の話が書いてある。金環日食東京スカイツリーに続くものだ。後半に、次の文章がある。
 
▼トキというと女優高峰秀子さんのどきりとする言葉を思い出す。中国から繁殖用にトキが贈られたと聞き、こう言った。「どうすんだ、そんなにトキを増やして。カモ南蛮の次はトキ南蛮でも食べるのか。わざわざ連れてこなくていいんだ。死ぬときゃ、死ぬんだよ」(斎藤明美高峰秀子の捨てられない荷物」)▼すべてに厳しかった高峰さんらしいが、それでも、トキがむやみに命を奪われて続けてきたことは認めてくれるだろう。
 
最後のフレーズを読んで、高峰秀子はそのようなことは百も承知で「死ぬときゃ、死ぬんだよ」と述べていたのではないかと思った。斎藤明美氏は新潮社の図書PR誌「波」に「高峰秀子の言葉」を連載してきたが、この中で高峰を「何事にも確固たる人だった。確固たるものは、一朝一夕では生まれないし、身につかない」と述べている。
 
高峰秀子の言葉」からいくつか『厳しい言葉』を書き留めておく。「言ってわかる人は言わなくてもわかる」(第三回)、「他人(ひと)の時間を奪うことは罪悪です」(第四回)、「他人(ひと)に食わしてもらったなんて、一年もないッ」(第七回)、「人を見たら敵だと思いなさい!」(第八回)~小生はまことに真実な言葉だと思うけど~。
 
高峰秀子は五歳のときに実母を結核で亡くし、実父の妹に函館から東京に連れてこられた。上京してまもなく偶然に映画「母」の子役に選ばれ、自分では好んでいなかった女優人生を送った。「他人に食わしてもらったなんて・・・」の中で、斎藤氏は「ひとたび、過去の、それも自分の意志を無視され否も応もなく人生の荒波に突き落とされた五歳の時に時間を戻した時、高峰は、思わず牙をむいた」と書いている。