菅前首相を参考人招致

 昨日、「国会事故調査委員会」は菅直人前首相を参考人招致した。約2時間50分におよぶ聴取であり、今朝の各紙はそのおもなやり取りを大きく紙面を割いて報じている。いま「朝日」と「読売」を手元で比較している。両紙とも「国に責任、おわび」とスタートは同じだが、中味は明らかにニュアンスが異なる。
 
「個別には反論」「理論武装、適切さ強調」(朝日)に対して、「事故対応は正当化」「弁明に終始」(読売)となっている。この両紙の違いの底辺には、原発に対する明確な姿勢の違いがある。朝日の脱原発路線vs読売の原発推進路線という構図だ。とくに今朝の朝日オピニオン面はほぼ反原発記事で埋まっている。
 
菅氏が首相の立場を超えて事故対応の細部に口を出したとして「過剰介入」との批判を受けているが、聴取では「原災法は地震原発事故は別々に起きると想定している。想定が極めて不十分だったため、やらざるを得ず、いろいろやった。それが本来の姿とは思っていない」と説明。政府・東電事故対策統合本部の設置など超法規的な対応をとったことへの理解を求めた。(毎日)
 
また、「原発は国策。責任は国にある」と菅前首相が謝罪した。福島県の避難者たちは「それなら早く補償と除染を」などと政府の対応を批判。傍聴した双葉町の井戸川克隆町長(66)は、菅氏が経済産業省原子力安全・保安院職員らの力量不足を初動対応のまずさの一因としたことに「それで終わりにされたら、何の解決にもつながらない。町民のことを思うと悔しくて涙が出た」と話した。(毎日)
 
 「産経」は「読売」よりもさらに厳しく菅氏を批判している―責任転嫁、自己正当化、そして「記憶にない」。采配を振るった最高責任者(原子力対策本部長)の無反省さを改めて見せつけた。事故拡大を防げなかったことも、付近住民に適切な避難指示を出せなかったこともどこか人ごと。自らが「人災の元凶」だったとの自覚はない。「私が知りうる限りのこと、考えたことについてできる限り率直に答えたい」。菅氏は冒頭こそ神妙な面持ちだったが、その後はのらりくらりと質問をかわし、質疑の大半をいかに責任逃れするかに費やした。事故調委員は、菅氏が法的根拠と責任の所在が曖昧な指示を繰り返したことを問題視したが、菅氏は「記憶にない」と強弁し、いったんは事務方に責任をなすりつけた。
 
やはり国家の最高責任者に対しては追及が厳しくなる。当然のことであり、国会事故調は冷静で踏み込んだ調査結果を国民に示してほしい。