新たな家族・コミュニティづくり

ここ数年、朝日新聞によって「孤族」が、そして、NHKによって「無縁社会」という、現代社会を象徴する言葉が使われてきた。両者ともに、社会的に孤立した高齢の単身世帯が増加していくさまをルポして、その社会的リスクを警告してきた。人と人との関係が希薄になり、孤立する個々の人々を助け合うコミュニティが未だ確立されていないことを指摘するものである。戦後、地縁・血縁社会の崩壊、核家族化、さらには個の時代へと進んできたことで、終局的には「誰にも看取られることなく、命を終える」事態を危惧している。
 
今朝の「読売」解説面で「論点スペシャル/家族の危機」を取り上げている。「家族の危機が叫ばれて久しい。これからの家族のありようや、新たな絆の可能性を考える」として、二人の有識者が具体性をもった見解を述べていて参考になる。山田昌弘・中央大教授と亀岡誠・三菱総合研究所参事が発言している。
 
山田氏は、「35~44歳の未婚者の約4割が親と同居し、非同居の未婚者比べて非雇用率が高い。このまま放置すれば、仕事も結婚もする気がうせ、高齢の親の年金にまで頼る『中年パラサイト』を繁殖させる悲惨な事態を招くだろう。対策は、単身者の増加を見据えた社会のあり方を議論するよりも、家族づくりの後押しが先決だ。結婚支援策として、労働環境の改善は急務だ。これは男性だけの問題ではなく、女性が結婚、出産後も働きやすい環境をつくることは家計の安定に寄与し、家族形成力を強める。子育て世代への社会保障の下支えも重要だろう」と、政府や自治体の取り組みを強化すべきだと語っている。
 
一方、都市生活者のマーケティングに携わってきた亀岡氏は、「家族は唯一のよりどころではない。友人や隣人の『ちょっとした絆』は、とくに将来増加が予想される中高年の未婚者にプラスに働くことが期待できる」と、いわば緩やかなコミュニティ形成を提唱している。
 
「朝日」経済面の「セブン、秋田初出店~『高齢県』コンビニ乱戦」も高齢化社会の行方を示唆する内容になっている。このように読者に丁寧な説明をした経済記事は意味が大きいと評価する。