宰相の条件

  「政治生命をかける」との決意を国民に示している野田首相が孤立無援にみえる。党内外の動きが首相の意を汲んだものになっていかない。発言もますます紋切り型になってきたし、本来もっていた愛嬌もまったく影を潜めている。「対小沢」、「対谷垣」の戦略と戦術がごちゃごちゃになっている。そろそろ断固たる真のリーダーシップを発揮しないと、目標未達成のまま土俵から引きずり下ろされてしまいかねない。すでにぎりぎりの瀬戸際だ。
 
 読売1面「指導者―考」で、中曽根元首相の例が挙げられている。野田首相にとっては「政治の師」に近い中曽根氏は本紙インタビューで「国を支え、発展させる信念の強さ」が宰相の条件だと言い切った。中曽根氏が「偉大な指導者」として敬う一人が、サッチャー元英首相だ。同紙国際面で、サッチャー氏は「私は変節しない」と宣言し、市場経済原理を効かせた「小さな国家」への革命的転換に着手していったとある。野田氏は首相就任直後の昨秋、中曽根氏に助言を仰いでいる。
 
国鉄分割民営化の断行など、中曽根政権の功績となった難題突破の陰には、「後藤田正晴(官房長官)金丸信(副総理)がいた」と中曽根氏は振りかえる。今年の春に読んだ「後藤田正晴回顧録(後藤田正晴;オーラルヒストリー)には、中曽根氏の不退転の決意が周りの人間を動かしていく様子が詳しく述べられている。はたして、輿石幹事長はその相手たりうるのか。岡田副総理は手足となって「一緒に死んでくれるのか」。
 
同じく読売政治面「政(まつり)なび」に、消費税を導入した竹下政権の足跡が書かれたメモに野田首相が先月22日、目を走らせていたとある。竹下首相が小渕恵三官房長官小沢一郎官房副長官に功を競わせて政策を進めたとの内容である。質問に立った竹下元首相の実弟である竹下亘氏は「竹下内閣は『これで終わり』と腹を決めて臨んだ」と訴えた、と記事は伝えている。