「ゆとり世代」研修

   読売で今日から「大人になったゆとり世代()」が始まった。ゆとり世代とは、2002年度実施の学習指導要領に基づく「ゆとり教育」を受けた世代である。学習内容の大幅削減、完全週5日制を行い、子どもの考えや個性を尊重する教育内容であった。この「ゆとり教育」には批判も多く、2008年告示の学習指導要領は「脱ゆとり」に方針転換している。
 
 伊藤忠商事は新人研修の一環として「登山研修」を行い、新入社員110人が標高1900㍍の茶臼岳(栃木県)に挑んだという。同社の昨年度の研修は「合宿によるビジネスプランを考える」であったが、今年はこの登山に変えた。「苦しい時にいかに行動するかが大切」が目的である。23日のテント生活で、午前3時起床で、食材や防寒具など数キロの荷物を背負ってロープ伝いに登ったとある。
 
 30年ほど前の「地獄の特訓」と呼ばれる厳しい社員教育を思い起こさせて、思わずため息が出た。ここ数年間、企業の新人教育はマナーや知識を教える座学より、厳しさを体で覚えさせる体感型が増えているという。背景には、企業が、ゆとり世代に「意識の甘さ」を見ていることがある。
 
 この世代の若者は「今のままの自分でいい」という自己肯定の価値観が強く、周囲に合わせようとしない傾向があり、また、競争意識も低いそうだ。企業側はその「甘い自分の殻」を早い段階で取り払おうと、厳しい研修で揺さぶりをかけている。そう記事は伝えている。子どもの頃から経済の厳しさを見聞きしながら育った彼らは、こうした訓練に耐えうるのか?? 
 
 大人が決めた教育を受けただけで「ゆとり世代」と呼ばれることに違和感や反発する気持ちを、新人たちはどう解消していくのだろうか―。かつて団塊の世代の多くの企業幹部から「ゆとり教育になって、日本の子どもの学力や意識が低下した。早く手を打たなければ取り返しがつかなくなる」とあちこちで聞いた。経済の長期に渡る低迷とグローバル化の急進のなかで、「ゆとり世代」の新人たちが萎縮しないで成長していくことを願うばかりだ。