紫陽花の色深し

   紫陽花は律儀な花だと思う。いつの間にか葉を茂らせていて、花が開き始めるとたしかに入梅になる。昨年も一昨年も暑さが予想以上に早かったので、いまひとつ色彩に艶がなかった。だが、今年は我が家の二種類の紫陽花も華麗そのものだ。近所の家々の庭にはさまざまな色彩の紫陽花が咲いていて、通るたびに目と心を豊かにしてくれる。
 
 今朝の日経「春秋」は「青に見えたり、紫に見えたり。アジサイは咲く場所や時期によって、虹のように色が変わる。じっと見つめれば、名前では呼べない中間の色合いに、とこまでも続く底知れない深さがある。その深さの中に、何か大切な秘密が隠れているような気がする」と、情緒溢れる筆づかいで表現している。
 
 さらに「『ダンスパーティー』という品種がある。静岡県掛川市加茂花菖蒲園で開発されたのは18年も前だが、なぜか昨年になって人気が爆発した。はじけるように広がる華やかな咲き方が、くるくると回って踊る人々のドレスのようだ。元気な動きを感じさせる花が売れるのは、この国を覆う重苦しい空気と無縁であるまい」と続けている。
 
 紫陽花の花言葉は、「移り気」「高慢」「辛抱強い愛情」「元気な女性」「あなたは美しいが冷淡だ」「無情」「浮気」「自慢家」「変節」「あなたは冷たい」だという。誰もが己の姿に重ね合わせることができるはずだ。でも、これはあまり公言しないほうが良さそうだ。紫陽花=秘めた美しさ、なのだから。
 
 「春秋」が引用している正岡子規の二句。「紫陽花や はなだにかはる きのふけふ」、「紫陽花や きのふの誠 けふの嘘」。・・・!!