「あっという間の青春が残った」

   「あっという間の時間を過ごし、あっという間の青春が残った」。昨夜、学生時代の4人で会食した帰り、久喜市から参加したH氏が電車からメールしてきた言葉だ。小生以外のH氏、札幌のG氏、横浜のN氏たち3人は卒業以来で、40数年ぶりに再会したのだった。会った最初の瞬間は、見ごたえがあった。60代半ばから一挙に20代前半のそれぞれにフラッシュバックしたのだ。3人は「うっ!!」というように言葉にならない言葉を飲み込んだようだった。
 
 入学して最初の一年余は全員寮生活を送った。その時のさまざまな場面を、それぞれがつなぎ合わせていった。記憶の断片が誰かの話によって、少しずつつながり、蠢いていった。まるで黒澤明の「羅生門」の世界である。いまや真実は誰にも分からないのだが、それで良かったし、十分であった。語る内容にも、語り口にも各自の人生がそっくり反映していたが、北海道なまりの札幌弁は共通してそのままだった。
 
 G氏が一枚の写真を持参した。入学間もない同じ学科の9(男子5名、女子4)が写っていて、全員が少年と少女の面影を残していた。現在、いま突然会っても、小父さんたち、小母さんたちはお互いに気づかないだろう。G氏が言った。「この写真は誰が撮ったと思う?」。分からなかった。G氏の推理によれば、指導教官であったI先生だろうとのことであった。当時、学生でカメラを持っている者は周りには少なかったものね。おそらくそうだろう。
 
 銀座4丁目の居酒屋「浜町亭銀座店」で2時間余り談笑しながら呑んで食べた。一人2500円であった。この飲み屋は本当に安い。相談して、H氏が詳しい神保神保町にタクシーで移動した。都営地下鉄神保町駅からほど近い居酒屋「酔の助(よのすけ)」に河岸を変えた。BS-TBS吉田類の酒場放浪紀」に登場したというが、客で混み合っていた。数限りないほどのメニューの中から鯨ベーコン、ジャガイモの明太子グラタン風、とり皮ポン酢などをつまみに、二回戦が始まった。
 
 N氏が集合の前に行った浅草寺で買ってきたほおずきが、この店の古風な風情になんとも似合っていた。また、会おうね、みんな!!