姜尚中「本との出会いには偶然や僥倖がつきまとう」

 朝日be版に「人生を変えた本と出会いましたか」とあり、「はい」42%、「いいえ」58
%とある。「はい」の人は10代以下(44%)に「小説」から「生き方の目標を見つけた」との回答が多い。「いいえ」の人はそうした本には「たまたま出会っていない」が断然トップ。「本以外の文化ジャンルでならある」(20%)で、「映画」「音楽」「テレビ番組」などがあげられている。人生を変えた本が「ない」人でも7割超が「出会いたい」と思っている。
 
 読者アンケート(3038)の結果で、夏目漱石『心』、太宰治人間失格』、三浦綾子『氷点』、マーガレット・ミッチェル風と共に去りぬ』などで人生が変わったという。同記事の囲みで、姜尚中・東大大学院教授は人生の一冊となる本との出会いについてこう述べている。「人生の師との出会いのように偶然や僥倖がつきまとう。本が多大の影響を与えるとすれば、それは読み手が問い続けているから」。同感だ。
 
 先日、出版プロデューサーS氏から新聞の書籍広告について聞いた。大まかに言えば、朝日の読者は本屋に良く行き、本を熟読し、図書館にも通う人が多い。ゆえに、とく1面下3段にはわりあい重厚な本の広告が多くなる。一方、日経読者は総じて情報志向である。日常的にWEBを多用してビジネス中心に活動するタイプが多い。したがって、情報系、マネジメント系の本の広告が多くなる。読売は現実的で実用系の広告がやや多い。こんな感じであったが、妙に納得した。
 
 小生が若い頃に感動した本が3冊ある。「ニューヨークタイムズの一日」(ルース・アドラー著、平凡社、1973年)と「メディアの興亡」(杉山隆男著、文芸春秋、1986年)だ。もう1冊は「江戸のデザイン」(草森紳一著、横尾忠則装幀、駸々堂1972年)。この本は書評を見てすぐ本屋に注文して、取りに行ったら手持ちが足りなかった。一桁間違っていた。しかし、その後、その何十倍の慰めを与えてくれた。草森氏には直接会って話しを聞いたことがある。世間知らずの若造に、両切りピースを喫いながら優しく接してくれた。シャイな人だった。(彼も帯広出身だったなぁ)。