ジョセフ・ナイ氏の見解

 スクラップした15日付けの読売「地球を読む」がテーブルの横にそのままになっている。国際政治学者のジョセフ・ナイ氏が「シリア虐殺」について述べたものだ。「どこかの国で続いている残虐行為を阻止するため、他国はどの時点で軍事介入すべきか。これは実に多くの前例をもつ、古くて新しい問題である。今まさにその順番が回ってきたのが、アサド政権下のシリアである」と書き出している。
 
同氏は米国を代表するリベラル派の一人で、米民主党政権下でしばしば政府高官を務めた。知日派でもある。対日外交の指針としてリチャード・アーミテージらと超党派で「アーミテージ・リポート」、「第二次アーミテージ・レポート」(正式名称:"The U.S.-Japan Alliance: Getting Asia Right through 2020")を作成・発表。日米同盟英米同盟のような緊密な関係へと変化させ、東アジア地域の中で台頭する中国を穏健な形で秩序の中に取り込むことなどを提言している。
 
 ナイ氏の見解-「自国民を攻撃し、その責任を省みない国があれば、国際社会は軍事介入を考慮できる。この『保護責任』という考え方は、2005年の国連首脳会議で、全会一致で採択された。だが、この決議を全加盟国が同じように解釈しているわけではない。たとえばロシアは、総会決議ではなく、安保理決議だけが国際法として拘束力を持つと、一貫して主張している」
 
 「我々は、多様な文化の世界に生きている。他国民を動かす方法や国造りに関して、ほとんど知らない。世界を改善する方法に確信が持てない時は、慎重さが重要な美徳となる。外交も医療と同様、『まずは事態を悪化させない』という原理に導かれるべきである。慎重さとは、人道介入がつねに失敗するという意味でもない」
 
 「『熱いストーブの上に乗ったネコは、二度と熱いストーブに乗らないだろう。だが、冷たいストーブにも乗らないだろう』(作家マーク・トウェインの名言)。我々はこのネコになってはいけない。人道介入は今後も続くだろう。ただし、その期間は短縮され、用いる軍事力も小規模で、遠隔地から作戦を遂行する技術に依存するものになりそうだ。サイバー戦争と無人攻撃機の時代を迎えた今、『保護責任』や人道介入が退場する可能性は、むしろ遠のいたと言えるかもしれない」(*アンダーライン:久末)