男子柔道、「王道か、覇道か」

「王道か、覇道か。新設大学のテニス部を舞台にした青春小説『青が散る』(文春文庫)に、部員たちが論争する場面がある。いかなる手段を使っても、試合の勝利こそ至上とするのが覇道ならば、王道のテニスとは何だろう。作者の宮本輝さんは、答えを示さない。ただ、登場人物のその後の生き方に関わってくることだけを示唆している」
 
 今日の「産経抄」の書き出しだ。ロンドン五輪の体操の個人総合で中国選手の姿はなかった。6種目の技がさらに高度化してきたので、2種目程度のスペシャリストを養成して戦う「分業方式」を採用しているためだ。「内村航平(23)は、それを承知しながらオールラウンダーにこだわってきた。28年ぶりに日本にもたらした金メダルは、体操の王道を歩んできた者だけに与えられる栄光である」と結んでいる。
 
 それに反して「最大のピンチに陥っているのが、柔道男子だ。『金メダル・ゼロ』の危機」(読売・スポーツ面)などと各紙が大きく報じている。男女の数試合をテレビで見たが、選手も審判員もすべて混乱している印象が強い。技の王道勝負という試合ではなく、ポイントをいかに稼いで逃げ切るかという採点ゲーム化している。どうすれば「技あり」、「有効」を取れるか、逆にいえば取らせないかの応酬に終わってしまう。
 
 日本柔道は今後も正道を行くのか、覇道を徹底するのか、指導者こそが岐路に立たされている。選手の今後の生き方にかかわる重要な選択だ。底辺をなす柔道少年、少女にどんな試合運びを指導するのだろうか??