西安の日本語学校

   お昼に中国から休みで帰国している友人と会って、面白い話を聞いた。彼は「第二の人生」として一年半前、中国・西安に行って現地で日本語を教えている。いくつかの興味深い例を上げておく。
 
 「生徒は18歳位から30歳過ぎまで、西安郊外から日本語の勉強のために来ている。約60人全員が寮に入り、朝七時半から夜九時過ぎまで懸命に学んでいる。言葉はもちろんだが、言葉に伴って日本での生活に必要な習慣、ルールなども身につけている。卒業したらすぐに来日して、日本で工場に勤めたり、農家に入ったりして、ほとんどの場合、3年間働く。それでお金をためて西安に戻る。両親の生活を助けたり、家族で住む家を建てたり、子どもの教育に力を入れる。とにかく、やる気満々で日本行きへのモチベーションはきわめて高い。『家族のため』という考え方が徹底している」
 
 「多くの生徒は入学前に2~3年間働いて、その時貯めたお金で学費を払っている。学費を両親に出してもらったり、親戚から借りて入学している人もいる。借金は卒業後に働いて返すというのが当たり前になっている。生徒は男女半々ぐらいで、すでに結婚している人も多い。中には、子どもを両親に預けて学校に来ている女性もいる。たとえば、その女性が卒業後は日本に働きに3年間来くれば、一歳の子どもは四歳になる。その間に子どもに会いに帰ることはない。ひたすら働いて、お金をためる。そして、帰国後は、そのお金を子どものための教育費として備える」
 
「中国でも一流大学卒業でなければ希望する良い就職先に入社することは難しい。大学入試のための学習塾が西安にも沢山あって、受験競争はますます過熱している。基本的には一人っ子政策なので、男児の誕生が望まれている。仮に女児が生まれた場合には多額の金額を役所に納めれば、もう一人産むことが認められる。男子の子どもを生むためだ。このため、必然的に男子の数が多くなる。1990年代生まれの男性が結婚する時期になってきたが、相手の女性が絶対的に不足していて、結婚できない状況が増えてくる。これから『剰男(じょうなん)』という言葉が一段と使われるようになるだろう」