第3次アーミテージ報告

   米政策研究機関「戦略国際機関問題研究所(CSIS)」は15日、超党派有識者による日米同盟への提言「第3次アミテージ・ナイ報告書」を発表した。2000年、07年に続くもの。中国の台頭や北朝鮮の核開発に対処するため、日米韓の強力な関係が地域の安定と繁栄に不可欠だとする。「米国は最大の外交努力を傾注して日韓の緊張を緩和すべきだ。日本も歴史問題を直視しなければならない」と、日韓関係改善のために対応を促している。
 
 報告書は、アジア太平洋地域が大きな変化の時代を迎えていると分析。日本は「一流国家であり続けたいのか、二流国家で満足するのか」の決断を迫られ『重大な転機』にあるとして、長期にわたり混迷が続く日本の政治に警告を発した。「日本の若者に悲観主義が広がっていると指摘しながらも、いくつかの決断によって日本は『一流国』の座を維持できる」と主張している。
 
 野田政権による原発再稼動については、経済の活力維持や温室効果ガス削減の観点から「責任を持った正しい措置」と評価した。原子力の平和利用促進による「エネルギー安全保障」の強化を日米両政府に要請している。「シェールガス」ブームなど米国で生産が増えている液化天然ガス(LNG)の対日輸出については制限緩和を米政府に求めている。
 
 「新たな同盟戦略」の要点は、日本列島と台湾、フィリピンを結ぶ第1列島線を越えて米空母打撃群の「接近阻止・領域拒否」戦略を進める中国海軍に対するもの。米軍の「統合エアシーバトル(空海戦闘)」と自衛隊の「動的防衛力」構想で対抗すべきだと提言している。とくに日本は、近隣諸国から差し迫った脅威を受けており、尖閣列島を事実上の「核心的利益」と位置づけて海軍を増強している中国との偶発的な衝突に備え、米軍と自衛隊の相互運用能力を高めるべきだと強調している。
 
 米軍普天間基地移設問題では時間と政治エネルギーを浪費したので、過去にとらわれず、将来の安全保障を考える打開策を見つけるべきだとの立場をとる。以上の報告には、アーミテージ元米国務副長官、ナイ元国防次官補、グリーン元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長らが参加した。(7/18、7/22付参照)