「竹島」「尖閣」への対応

   「野田親書」をめぐる日韓の両政府の応酬で、わが国が初めて厳しい対応を示している。国際司法裁判所(ICJ)への共同付託提案、昨日の外務省入り口での受け取り拒否、天皇謝罪発言に対する謝罪・撤回要求、さらに日韓通貨交換(スワップ)協定の白紙化検討などだ。野田首相は国民に向けて十分な内容理解を求める手間を惜しむべきではない。国内的には記者会見などによって政府の見解を国民に訴えかける。さらには、国連に出かけてわが国の主張を首相自らが演説で訴えて各国の理解を求める、などを実行すべきだ。こうした強い発信力こそが首相にいま問われている。
 
 野田首相は昨日の予算委員会で東順治氏(公明)の質問に答えて、会田雄次氏(元京都大学名誉教授)の教えを披露した。「戦後の日本人は、①宗教心、②道徳、③歴史観、を習わなかった。やがてこれらの人たちが社会のリーダーになっていくことを考えると恐ろしい」。中国や韓国の子ども教育に比べて、わが国の学校では近代史・現代史を学ばないことを語ったものである。ただ、その教えが平板なナショナリズム高揚のためだけに目的化されることがないように、首相はよく噛み締めながら検討してほしい。
 
この問題で地味に見えるが、今朝の読売2面トップに「米レーダー、日本に拡充」の記事がある。日米両政府が北朝鮮・中国の動きを視野に入れて調整に入ったとの内容だ。アジア太平洋地域のミサイル防衛力を向上させるため、飛来情報を解析する米軍の早期警戒レーダーを日本国内に追加配備する方針で、調整に入ったという。米国のアジア太平洋重視戦略の一環である。「北の核」と「中国の核心的利益」(領土問題)への対抗措置として検討されている。先日紹介した「アーミテージ・ナイ報告」の方向に沿った作戦だ。
 
中国の「核心的利益」論は3つの戦略からなっている。「世論戦」、「法律戦」、「心理戦」であり、今回の尖閣問題ではこれらを重複させた戦略がとられていると理解すべきだ。いずれも一方的な展開を取り、それを是とする。この背景にあるものが軍事力の強化であることは周知のとおり。海軍、とくに空母の強化に戦略上の注力が行われていることは多くの専門家が指摘している。