「静かに、健やかに行く」

 「静かに行く者は健やかに行く。健やかに行く者は遠くまで行く」。フランス経済学者の大御所であったレオン・ワルラスが好んだ言葉だという。城山三郎氏は「わたしもこの言葉が大好きで、ひそかにこれまでの人生の支えとしてきた。これからもそうしていきたい」と所感を述べている。城山氏は「ぼちぼちとは、ともかく、前に向かって歩いていくことである。自分のペースで歩き続けているということである」と語っている。
 
 自分の行状も、世間の動向も現在、こうした方向とは真逆なベクトルを描きながら時間を食らっていく。そんな騒々しくて寒々しい時代にわれわれは生きているようだ。毎朝、新聞を広げ、夜には報道番組を観ていると「静か」や「健やか」という印象がどこか彼方にぶっ飛んでしまっている感がする。断片的な活字と映像がわれわれ庶民の考えを破壊し、思考停止状態にしてしまう。そうして昨日が終り、今日が始まる。
 
 われわれは城山氏が言ったような「ぼちぼち前に向かって歩いている」のだろうか?ーはなはだ疑問だ。詐欺師のように人心を操ろうとしたり、一度投げ出した最高権力者の座に再度登ろうとしたり、テレビを利用した表層人気で国政進出を狙ったり、実に奇妙な喜劇というか、悲劇というか、そんな浅薄な劇場型村芝居が人気を博している。(浅はかさゆえ人気が出るのかー)まあ、さまざまな人物が多少はいてもいいのだが、あまりにも目に余る。この国はいったいどこに向かっているのか???
 
 せめて深呼吸をして緑の木々を眺めてから、これらの人たちをじっくりと吟味しようではないか。こうした「機を見るに敏」だけのリーダーたちが多くては、わが国が真に再生することは難しいと思うのは、普通だろうに・・・!?