「玉蜀黍(とうもろこし)の焼くるにほひよ」

昨日昼過ぎに大きなダンボールが宅急便(冷蔵)で届いた。札幌の妹からで中味は「とうもろこし」と書いてある。開けたら3種類のとうもろこしがぎっしりと入っていた。「ゆめのコーン」、「ゴールドラッシュ」、「ピュアホワイト」とそれぞれに説明書がついている。いずれにも共通しているのは、粒皮がやわらかく、甘さが一杯という点だ。ラップにくるんで3~4分レンジでチンすると美味しく食べられるとある。茹でる場合は5分前後だという。家人がさっそく息子のところと隣家におすそ分けした。
 
妹に電話をかけたが出ないので、留守電にお礼を伝えておいた。夕方、返電があり、「札幌が今日もすごく暑かったので居眠りしていた」と笑っていた。30度以上が続いているらしい。お盆過ぎにこんな猛暑が続くなんて、北海道でも温暖化が進んでいるのだろう。それにしても、トウキビといえばあの香りである。茹でても焼いても食欲をくすぐる独特の匂いがなんともいえない。子どものころ、母のそばで兄妹四人そろって茹で上がるのを待っていたものだ。
 
「しんとして幅廣き街の 秋の夜の 玉蜀黍の焼くるにほひよ」。石川啄木が詠んだ札幌のトウキビ屋台の情景だ。大通り公園では明治時代後半からトウキビやジャガイモの屋台が出ていたという。屋台が増えすぎたため、札幌市は昭和40年に屋台を排除した。ところが、市民から「町の風物詩をなくしてはならない」との声が強まり、昭和42年に「とうきびワゴン」が誕生した。たまに札幌に出張して朝散歩していると、荷物をもった旅人たちが大通りに来て焼きトウキビを朝飯代わりに食べているのを見ることがある。
 
トウキビのお菓子はポップコーンだが、これも小さい頃の思い出がある。時々、町内に「ドン屋」が回って来た。トウキビやコメを渡すと、簡単な機械に入れて蓋を閉じて「ドーン」と破裂させる。子どもたちは袋に一杯入れてもらって、つまみながらおしゃべりを続けたものだ。あの頃のトウキビは形のばらつきは当然だったし、実もところどころ欠けていたりしていた。最近のものは当時からすれば驚くほど美形に変身している。また、甘さがフルーツとでもいうべき美味しさを含んでいる。