「秋 カチリ 石英の音」

昨日は暦の上では「白露(はくろ)」だった。大気が冷えてきて、草木の葉に露の結ぶころをいう。厳しい暑さの日々も朝夕少しずつ肌合いを変えつつある。
 
今朝の朝日be版「高橋睦郎・季をひろう」から。「秋の訪れを感得するとは、言い換えれば夏の終りを確認すること。その事情をみごとに捉えた詩がシャルル・ボードレール(1821~67)一代の名詩集『悪の華』にある」。
 
   「抑(そ)も誰(た)がためぞ。――昨日(きそ)夏なりき、今し秋」。(「秋の歌」1。斎藤磯雄訳)
 
 先月、ブログにこう書いた。「詩人立原道造ソネット(14行詩)集『優しき歌』に、こんな一節があった。<いつの間に もう秋! 昨日は夏だった>。きょうは、『立秋』」。
 
高橋氏は述べている。「私たちが新暦を採り入れた時、ヨーロッパの季節感を採り入れた、ということかもしれない」。
 
 「秋 カチリ 石英の音」。この詩で、あの井上靖氏が文学への洗礼を受けたという。「同級生の作品です。藤井君といいまして、一生文学青年で通したような男でした」。井上氏はかつて対談でこう語っている。