佐伯啓思・京大教授の橋下氏批判

 読売「論点スペシャル」で、「日本維新の会」を取り上げている。橋下・大阪市長が昨日、その旗揚げを正式に表明した。佐伯啓思・京大教授、森信茂樹・中央大法科大学院教授、外交評論家・岡崎久彦氏が橋下氏のポピュリズムや「維新八策」の抽象さについて鋭く批判している。佐伯氏は以下のとおり警告している。
 
「橋下氏は常に簡単に実現できない目標を設定し、敵を作りながら敵を倒す、という手法をとってきた。デマゴーグ(扇動政治家)型の要素が非常に強いポピュリズム(大衆迎合主義)ともいえる」、「橋下氏のブレーンには、竹中平蔵総務相らが名を連ね、新自由主義的路線が濃厚だ。ただ、橋下氏自身が何をやりたいのかは、わからない」、「前言撤回をなんとも思わず、常に自分を正当化しようとする。政治家としての信頼性という重要な点で危うさが潜んでいる」
 
昨夜NHK「NC9」で政治部デスクが橋下氏の「ツィッター」による情報発信の凄まじさを紹介していた。自らの政策的見解を短い言葉で連射・発信し続けている姿は、政治家の既成観を大きくジャンプしていて、脅威すら感じた。今という時代をフルに活用した一種催眠術にも似た情宣活動そのものだ。
 
佐伯氏は「現代では、人々はメディア・情報からあるメッセージを受け取るというよりも、メディア・情報をそのものを消費している。モノを消費して欲望をみたすのではなく、情報を消費し、いつのまにか欲望を植え付けられる」(「『欲望』と資本主義~終りなき拡張の論理」:講談社現代新書)と喝破していた。
 
佐伯氏の新著「経済学の犯罪」(講談社現代新書)にこうあるーー「貨幣」は近代的合理主義の精神のもとで、いっそう大きな富を生み出す資本へと転化した。「過剰性」がいっそう大きな富を生み出すのである。「禁欲」と「節約」が「過剰性」をいっそう膨張させることになる。これを可能とするのが資本である。これが資本主義と呼ばれるシステムの本質なのである。ーーこの「資本」を「情報」に置き換えれば、橋下氏の情報発信至上主義の本質がよく分かる。