尖閣・竹島で核心的な海外広報強化を !

  今朝の読売に、尖閣諸島竹島問題の海外広報強化に関する記事がある。1面には「首相、国連で国際司法裁の応訴義務国拡大訴え、中韓念頭に26日」、2面には「尖閣竹島 広報戦略強化へ、中韓に対抗、日本の立場を海外へPR」となっている。両方の記事を読んでみると、広報を生業とする者としてどうも腑に落ちない。
 
 1面記事では、「首相は、国際司法裁判所(ICJ)で他国から訴えられ場合に応じる義務が生じる『義務的管轄権』の受諾を各国に呼びかける意向である、ことが分かった。その一方、中韓両国を過度に刺激しないよう、南シナ海竹島など具体的な地名は挙げない考えだ。日本政府は中国とは領有権問題が存在しないとの立場だが、国際法順守の姿勢をアピールすることで、尖閣列島を巡る対立についても、日本の主張に対する理解を広げる効果を期待している」と述べている。
 
義務的管轄権の受諾国は日本を含め8月現在、国連加盟国193か国中67か国。常任理事国(米英仏露中)で受諾宣言しているのは英国だけ。受諾宣言した国が少ないのは、国の主権に関わる問題をICJに委ねることに慎重な国が多いためだ。
 
 2面記事の「尖閣竹島、広報戦略強化へ」は、政府の国際広報連絡会議で決めたもの。玄葉外相は「竹島はじめ、尖閣を含めて戦略的な対外発信を強化していく」と強調した。中国や韓国が国際社会に訴える活動を強めていることに日本政府としても対抗する。また、「これに関連し、外務省は19日、在京大使館関係者を招き、尖閣諸島の国有化について『日本固有の領土であり、国有化というよりも、地権者から国が島を購入しただけだ』などと説明、理解を求めた」と書いてある。
 
 これらを広報戦略と呼ぶにはあまりにも稚拙であり、理念がきわめて脆弱すぎる。広報の目指すところは明快でなければならない。中韓の国際広報戦略に比べていかに芯が細く、曖昧な訴求点であることか――広報の本質からして核心的に負けている。すべてが中途半端すぎる。論点をできる限りシャープにして、その理念を遂行するための戦略・戦術を駆使すべきだ。誰が参謀長か知らないが、最初から組み立てなおした方が明確に国益に叶うはずだ。