いしいしんじ「東京夜話」で夜更かし

 昨晩、風呂から上がって「東京夜話」(いしいしんじ著、新潮文庫)を読み始めた。結局、半分ほど読んだが、だいぶ夜更かししてしまった。下北沢、原宿、上野・谷中、新宿西口新都心、神保町など都内18地点を舞台にした「短編」である。この「短編」は、小説であり、エッセイであり、レポートであり、それらをすべて攪拌した「いしいしんじの書いたもの」だ。ほとんど息もつかないで読んでいたようだ。
 
 昔、誰かが「夜、ジャズを聴いたら眠れない」と言っていたが、昨晩は半分そう感じていた。これは眠られなくなるなぁ~!! しかし、そんな予感に反していつもより熟睡した。面白い文章は眠りを深める効果もあるようだ。いしいしんじは、今や実力派作家のうちに数えられるまでになった。この「東京夜話」は最初「とーきょー いしい あるき」として出版されたものだ。彼の第三作目の小説である。
 
 この本にある18の街、そのどこから読んでも彼独特の感性がほとばしり出ている。神田の古本街に登場する白い軍服のような格好の老人、上野・アメ横ではアメーバー横丁の女、地方の比較的大きな都市が山手線に組み込まれたと自虐する池袋の自信のなさ、など。一つ一つが長編の脚本に書き上げられるほどのコアを含んだ読み物になっている。だから、ついつい、もう一箇所となり、夜は更けていったのだ。
 
 今朝まだ寝ぼけながら昨夜の「いしいイメージ」で軽い頭痛を覚えて、朝飯を食べていた。コーヒーを少しばかり飲んだときにとつぜん解かった。あの「勢いある妄想は、若いから書けたのだ」と苦味を感じた胃袋がつぶやいた。残りのコーヒーを飲み干した。さて一日が始まる。月曜日はいろいろ準備をしなければならないことが公私にわたってある。続きを読むのは夜のニュースが終わってからにしよう。