ヒグマが知床・マス定置網からエサ捕り

けさの朝日・社会面にある「ヒグマが定置網にかかったカラフトマスを捕っている」写真に、複雑な思いを抱いた。北海道・知床半島の海岸で、ヒグマが泳いでいって網沿いに数十メートル移動し、かかったマスをみつけると口で巧みに網からはずして岸に戻った。そこには子グマが待っていた。札幌の写真家が撮ったもので、「クマの捕食行動は変化している。学習を重ね、確実に餌を捕れる場所を見つけたということだろう」と語っている。
 
少し以前に、この知床半島でエサが少ないためにげっそりとやせたヒグマの映像がニュースで流れていた。かつて川の上流で産卵のため遡上してきたサケを捕っているクマの姿はよく見られた。しかし、岸から泳いでいって定置網にかかったマスを捕るクマの話は初めてだろう。写真家によれば、この数年前からだという。まさか、海水温が高くなっているためにサケの遡上が遅れて、海に乗り出してエサを求めたのではないだろう…。
 
北海道新聞の記事から――「道は今秋から、コンブなどの海藻が激減する磯焼け対策として、海藻の栄養となる肥料を海中に投入する事業を始める。肥料は水産加工場から出る魚かすなどを活用し、道立総合研究機構中央水試(後志管内余市町)で効果を実証する。3年間の計画で、まず同管内寿都町で実施し、他の地域にも広げる考えだ。磯焼けは日本各地の沿岸部で広がっており、海水温の上昇などが要因とされる。
 
コンブやワカメ自体が消失するだけでなく、魚介類の生息環境を悪化させ、ウニやアワビの漁獲量減少も招いている。特効薬がないのが現状だ。こうした中、道は、寿都町や同町漁協が魚かすと木材チップを混ぜてつくった肥料に着目した藻に付着しているかなどの予備調査に着手した」
 
海水温度の上昇はかなり前から漁業関係者の間では深刻な問題になっていた。積丹半島沖でも3度ぐらい高いそうだ。余市町で捕獲された南の魚・ジンベイザメ小樽水族館ではエサを食べなくて、海に戻されたそうだ。このサメもサケの定置網にかかったのだった。海水温上昇などの環境異変が、人間やクマの生存にリアルに影響を与えてきている。