アーミテージ氏来日へ

 けさの読売・政治面の最下段にある8行のベタ記事が注目される。「アーミテージ氏来日へ――知日派のリチャード・アーミテージ元米国務副長官が来日し、22日にも野田首相、玄葉外相と会談する。沖縄県尖閣列島の領有権をめぐって緊張する日中関係や、日米関係の現状などについて意見交換する見通し」。こう、ある。小記事ながら、これを報じた読売の見識を評価する。
 
 尖閣列島を事実上の「核心的利益」と位置づけて海軍を増強している中国の動きが東シナ海で活発になっている。偶発的な日中の衝突も想定しなければならない状況にあるとの指摘も出ている。こうした事態に、わが国自衛隊と米軍との相互運用能力を高めるべきだーそのことを強調してきた一人が、アーミテージ氏である。8月15日、同氏やジョセフ・ナイ元国防次官補らは日米同盟に関する新たな報告書を発表した。いわゆる「第3次アーミテージ・リポート」だ。(当ブログ8/16付)
 
 この報告書は、「中国の台頭などをふまえ、日本は一流国家であり続けたいのか、二流国家で満足するのか、『重大な転機』にある」と指摘している。自衛隊による将来の集団的自衛権行使容認を念頭に、米軍との共同対処を含めた日本の新たな役割の検討と任務の見直しを求めているのだ。2000年、2007年に発表された第1次、第2次「アーミテージ・リポート」からすでにこの方向で日本に警鐘を鳴らしてきていた。その内容は「日米同盟vs中国・北朝鮮アーミテージ・ナイ緊急提言」(アーミテージ、ナイ、春原剛著、文春新書)に詳しい。
 
 今回のアーミテージ氏の来日が意味するものを我々は注視する必要がある。来日そのものによって、中国の出方が変わる可能性すらある。それほどこの来日は注目されるものだ。「日本はどうしたいのか、どうするのか」。それ如何で米国の対応が示されよう。それほど尖閣列島問題を焦点に日中間の争いが深刻化した事態になっている。そうした現状認識を日本政府に再確認するために、アーミテージ氏は来日する。『重大な転機』にある日本の覚悟を見定める、あるいは覚悟を突きつけるために彼は来日するのだ。