川越人と「おさつ」

   「焼き芋とかけて何と解く?」。答は「銀行の火事と解く。その心は、おさつ(お札)が焼けた」。そんな父親の思い出を語りながら、K氏は「川越人は露骨にサツマイモとは言わず、『おさつ』と言っていた」と書いていた。老人施設の責任者であり、毎月の「便り」の巻頭言を小生は楽しみにしている。「川越人のはしくれ」だそうだ。
 
 昨夜のテレビ東京「出没!アド街ック天国」は「本川越」をとりあげた。昨日と今日が「川越まつり」であり、今年が川越市制90周年であることから例年よりも大規模に行われている。そこで番組が「本川越」地区を特集したが、あまりにも「サツマイモ」を強調しすぎていて、番組が平板になっていた。ほとんどが「サツマイモ」に関係していた。たしかに、現在では川越=サツマイモの図式が分かりやすいし、街中の看板もそうなっているからだ。
 
 K氏は書いている。「近年の川越の観光ブームに便乗したサツマイモを前面に出した菓子が多く出回っている。それらはたかだかここ二十年ほどの間にできたもので、もともとあった川越のお菓子ではない。新しいから良くないという意味ではなく、川越名物というには年季が入っていないという意味である」、「土台、もともとの川越人は、どうもサツマイモに誇り(?)を感じていないフシがある。市外の人から『川越はサツマイモで有名ですよね』と言われたら、屈辱感を覚えるほどでないにしても、顔を赤らめて『えぇ、まあ・・・』と言葉を濁したり、さぞ迷惑そうに答えるのである。川越人はかなり見えっ張りなのである」。
 
 川越は小江戸と呼ばれる。川越まつりは江戸の天下祭の名残りをいまに伝える祭りでもある。当時から江戸の粋をとりいれて、さまざまな建築や町並みや人々の生活に生かしてきた。しかし、菓子屋横丁に観光バスが来るようになってから「イモ菓子」、「イモ料理」などが相次いで誕生して、川越の名産品として人気を呼ぶようになってきた。「イモラーメン」まである。川越は城下町であるから、もともとお菓子は美味しい街なのだ。「亀屋」や「くらづくり本舗」は昔からのお菓子屋さんで、我が家でもときどき進物につかう。全国の城下町のお菓子はほとんど美味しいことはすでに自分で実験済みだが、川越の老舗のお菓子もなかなかのものなのだ。