佐々木丸美「雪の断章」

    いま寝る前に佐々木丸美著「雪の断章」(創元推理文庫、2008年)を読んでいる。あと最後の20ページほどを残すだけだ。今夜にでも読了するだろう。二階の仕事部屋の横においてあった本で、家族のだれかが読み捨てにしたものだろう。書類を取りに上がったついでに、その本を持って降りてきた。柔らかなタッチの文章で、読み出したらクセになってしまった。佐々木丸美についてはまったく知らなかったが、奥付の著者紹介には北海道生まれ、とあった。調べてみたら次の通りだった。
 
「佐々木 丸美(ささき まるみ、1949年1月23日 - 2005年12月25日)は、日本の小説家北海道出身。北海道当別高等学校卒業、北海学園大学法学部中退。1975年、『雪の断章』で二千万円テレビ懸賞小説佳作入選。同作は斎藤由貴主演、相米慎二監督で映画化された。2005年12月23日、急性心不全のため死去。享年56。2006年から作品が続々と復刊されはじめ、再評価の動きが高まっている。小樽文学館2009年1月30日3月1日、企画展『雪の断章・佐々木丸美展』が開催された」
 
それにしてもこの小説は札幌を舞台にして、抒情と幻想が交じり合う独自の作風である(女流作家ゆえのかなり乙女チック度だ!?)。作者のデビュー作で1975年に講談社から刊行されたが、旭屋書店などが力を入れたこともあって人気があったそうだ。孤児を主人公にしたロマン推理小説ともいえる内容だ。
 
死後に復刊運動まで起こったという。作風は渡辺淳一が初期に書いていた純文学のような描写を感じる。渡辺氏を女性にして、さらにメルヘンさを加えた感じである。北国の季節と風景の移ろいを登場人物の心象に重ね合わせた筆致は、若い女性ファンをとりこにするはずだ。ミステリーというのは、このように展開していくのだという作者独特のパターンを作っている。ほぼ同年代で、こうした作品を残して固有のファンから愛され続ける作家もいることをあらためて知った。
 
隣町に住む友人・作家F氏のブログに、「100枚の小説が書き上がった」と書かれていた。どこかの文芸雑誌に掲載されて、作品に高い評価が得られるよう心から祈念している。F氏が骨身を削るように紡ぎ出した自らの生の証しなのだから・・・。