政府の尖閣広報特命担当は「面、立体的活動」を

   今朝の読売2面の「尖閣広報担当を海外派遣」の記事が目立った。政府は来月上旬にも北神圭朗首相補佐官(民主党衆院議員)を米国、カナダ、シンガポールに派遣することを決めたという。北神氏は英語に堪能で、野田首相から「尖閣問題の海外広報担当」の特命を受けた。訪問先では、「著名コラムニストや調査研究機関の有力者など各国の世論形成に影響力のある識者らに日本政府の見解を説明して理解を求める」とある。臨時国会の開会で首相や外相が国会対応優先となるため、北神氏を派遣するものだ。
 
 特命広報担当と言うわけだが、これだけでは政府の国際広報戦略の強化とはいえない。首相や外相に比べて一段格下なわけだから、北神氏にはかなりの権限を与える必要がある。それでなくても国際PR戦略では中国のほうが一歩先んじているのが現状の姿である。これに対抗するためには、さらに重厚な布陣を敷くことが求められている。プロジェクトチームを立ち上げて、広報担当特使の理論武装と人脈開発を拡大していくことが必要だ。インテリジェンス活動との連携を期待したい。
 
 小生は広報戦略を40年余生業にしてきたが、広報の要諦は「面、または立体的な攻めの広報」にある。一人や二人の担当者では実質的にはなにも動かない。多士多彩な広報チームが外部ブレーンを駆使して活動を展開していくときにこそ、その目的は成就される。今回の報道を見ている限り、「点の広報活動」の域を出ないのではないかとの懸念を抱く。首相、外相の多忙さが特命担当を任命するなどという認識の浅さであれば、すでにこの戦いの勝敗の行方は明らかだ。