鳥越俊太郎氏とメニエル病

   今朝の読売・くらし面「医療ルネッサンス」にあの鳥越俊太郎(72)が出ている。「難聴―メニエル病、一日中耳鳴り」とある。「あの」鳥越氏と書いたのは、大腸がんとの闘病に加えて、肺や肝臓への転移を再三にわたる手術で乗り越えてきたからだ。そして、依然としてジャーナリストとして活動している姿に注目せざるを得ない。筑後訛り丸出しの語りがその性格を現す。仕事では独自路線を切り開いていく記者魂に感服する。
 
 がん発見以前の2000年初めから、セミが鳴くような「虫の声」が気になった。虫の正体は耳鳴りだったという。24時間続く耳鳴りに加え、めまいなどもあってメニエル病と診断されたそうだ。メニエル病は平衡感覚をつかさどる内耳のリンパ液が過剰にたまり、耳鳴りやめまい、難聴、吐き気などの症状を起こす。原因はよく分からないが、ストレスとの関係が深いといわれる。鳥越氏はこの病気に今も立ち向かっている。
 
 小生も入社して4、5年目に、「メニエル症候群」と診断されたことがある。当時、大きなプロジェクトの責任者に初めて任命されて無我夢中で取り組み、半月ほど睡眠時間も削って仕事に集中した。一段落ついたので、家人と約束していた買い物にMデパートに行った。買い物が終り、帰ろうとして振り向いた瞬間に天井が回り始めた。もう立って入られず屈みこんでしまったが、今度は強烈な吐き気がきた。急いでトイレに駆け込んだ。
 
 30分近くトイレにいて、少し落ち着いてきたので家人のところに行った。デパートの医務室に話してあるというので、立ち寄ることにした。めまいも吐き気もまだ残っていた。その部屋でベッドに横になり、うなっている間に眠ってしまったという。目が開いたのは夕方6時過ぎ。なんと4時間近くも眠っていたことになる。まだ吐き気などがあったが、自宅に帰ることにした。翌日午前に病院で、メニエル症候群と診断された。会社は休むわけには行かなかった。
 
 耳の病気によるめまいや吐き気は一種恐怖感を伴うから、精神的にもかなり疲れる。鳥越氏はそれに加えてがんの連続攻撃を受けている。しかし、彼は前向きに捉えて手術を成功させ、仕事をすることで精神的なバランスを保っている。この姿勢には頭が下がる。体調が優れないときには、精神的にも優れないのだ。それを鳥越氏は自らの仕事=使命感によって、うな垂れそうになる頭を上げて「生きる意味」を求め続けている。